我が国の伝統的な洋裁文化。文化服装学院やドレスメーカー学院などの教育や啓蒙活動によるところが大きいが、一見廃れたかに見えるこの伝統、私は今でも脈々と続いていると思う。
前出のアンドルー・ゴードン著「ミシンと近代日本」のP196 に大宅壮一さんのこういう言葉が載っていた。
「外国人でこの洋裁ブームを見て、驚かぬものはない。」「なにしろ、「世界中どこへいっても、日本のように洋裁学校の繁盛しているところはない。」と。
以下は1958年の朝日新聞の記事で、1日5千人集まったドレスメーカー学院の始業前の様子です。
夥しい数の女性が門前にいます。本当にこの当時の洋裁熱が凄かった事がわかります。
かつてはこのように多くの女性が洋裁学校に通ったものです。花嫁修業の一貫とされ、女性は今のように4年生大学に行くよりも、短大か洋裁学校など、将来の良縁と主婦業のため教育を付けさせておくことが親の役目だと思われていた時代です。
ただ、今でもケイコとマナブに代表されるように日本のお稽古文化はなくなっていません。
これらは100年以上前からある茶道、華道などの稽古文化に由来しているようです。
一時驚く程の隆盛を極めた日本の洋裁学校ですが、それらの教育機関は出版社を持っているか提携出版社があり、今でも多くの洋裁本、型紙本(Pattern Book)と呼ばれるジャンルを形成しています。
洋裁文化でいうと、日本のパターンブックは海外でも一定の支持層がいるようで、たまに見るアメリカのソーイング関連ブログでも、コメントを見ると日本のパターンブックを元に自分の服を作ったりしている人が結構いるようです。
日本ほど本屋に行ってパターンブックが買える国は他にないからでしょう。
日本の型紙本は一部英語版などに翻訳されているようですが、翻訳されていないものでもアメリカの紀伊国屋などを通じて買っている人がいるようで、日本語がわからなくても型紙を写して工程図を見て作ったりしているようです。これには本当に感心します。
日本人も英語ならまだしも、それ以外の言語のソーイング本を見てやっている人なんてあんまりいないのではないかと思います。
今や文化服装学院も海外からの留学生が結構いるようですし、教育の機会や情報の多さなどで日本はかなり恵まれた環境と言えます。
そういう意味で西洋から輸入し独自の形で発展させ、今はミシンのみならず洋裁文化も輸出しているという点でかつて高度成長期からバブル期まで日本の発展の牽引力となった加工貿易が文化という側面でなされているのです。
なお、自分で洋裁の基本を勉強する際には、この本は役に立つと思います。
その名も洋裁百科。かなり分厚い本です。基礎から応用まで、洋裁・ソーイングのあらゆることを網羅しています。
その名も洋裁百科。かなり分厚い本です。基礎から応用まで、洋裁・ソーイングのあらゆることを網羅しています。
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